失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
「やはり黒ですね。いくつか証言も集まりました」
部屋の入り口から執務机の前まで足を進めたケイトは、結果をまとめた資料をレオネルに手渡す。
その資料に目を通したレオネルの表情は険しかった。
「やはりな。資金源が減って、結束力も落ちたんだろう。脱税など考えず、健全に過ごしていればいいものを」
鍵つきの引き出しを開けたレオネルは、一冊のファイルを取り出し、その中に資料を挟む。
何冊もあるその資料は、この国の闇だ。そして、レオネルが休暇を取れない原因でもある。
「……あとは言い逃れが出来ないほどの決定的な証拠か」
ふむっと思案し始めたレオネルにケイトはあっけらかんと答える。
「やっぱり一番は屋敷に侵入ですよねー、手っ取り早いし」
レオネルは堪らず盛大なため息を溢した。
「お前は……もう少し考えてから発言しろ。仮にも国に仕える者としてだなぁーー」
「僕が仕えているのは国でも王でもない。あなた様ですよ、レオネル様」
いたずらっ子のようにニヤリと笑う一筋縄ではいかない部下に、レオネルは注意する気も失せ、頭を抱えた。
その時、部屋にドアを叩く音が響き渡る。レオネルは誰が来たのかわかっているかのように、顔を上げることもなく雑な返事を返した。