失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
「失礼いたします」
体に響く低い声と共に入り口から大きな影が入ってくる。
ドアの上の部分に頭が当たりそうなほどの長身で、がっちりと鍛え上げられた筋肉を持つ彼は、さながら壁だ。そこに立っているだけで、かなりの威圧感を放っている。
彼、ジードは室内の様子を見ると、キリッとした眉を更につり上げケイトを睨み付けた。
「ケイト、お前またレオネル様を困らせたな」
「なにもしてないってぇ」
自分は無実だとでも言うように手のひらを上に向けてヒラヒラと振るケイトを見つめるジードの金の瞳には、まだ疑いの色が濃く残る。
「ほんとだって。僕は国でも王でもなく、レオネル様に支えているんだって主張しただけ」
「……なるほど、間違っていないな」
「だろう?」
ケイトもケイトだが、ジードも比べるまでもなく重症だ。
確かに二人はレオネル自らが連れてきた人物で、レオネルの補佐役として王宮に出入りしているが、宰相側近のレオネル直属の部下である以上、国に仕えていると言っていいのだ。
とは言え、こんなにも堂々と部屋に出入りしているケイトとジードであるが、二人の存在を知る者は数少ない。
それは、レオネルの仕事が大きく関係している。
だが、ケイトもジードもそのことに不満は一切なく、それどころかレオネル以外の命令を全く聞こうとはしないのである。