失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
レオネルにとっても二人の存在は大きく、信頼もしている。自分に忠誠を誓ってくれるのだって嬉しく思っているのだ。
ただし、二人の存在を知るレオネルの上司でもある宰相の命令すら聞こうとしないケイトとジードの扱いに時々困ることがあるのも事実ではあるのだが。
レオネルは色々と言いたいことを飲み込むと、気合いを入れなおし顔を上げる。
これ以上無駄話をしていると今日も徹夜コースだからだ。
「話を戻すぞ。ジードも聞いてくれ」
レオネルの空気が変わったことに二人も気づいたのだろう。ケイトとジードの眼差しが一瞬で変わる。
「まずは証拠を掴む。持っていそうなところを絞れ。取引相手も対象だ。……まぁ、最終手段はーー」
「こっそり忍び込みますね」
あっけらかんと言い放ったケイトの言葉にレオネルの眉がピクリと動く。しかし、今度はレオネルの口から否定の言葉が出てこない。
「絞りこんだら教えてくれ。俺はそれまでにこの仕事を片付ける」
レオネルが指差す先にあるのは、机の上に積まれた宰相側近宛の仕事の山。
「こんなに引き受けなければよいのではありませんか?」
ジードの言葉にレオネルの眉が情けなく下がる。
「そうだよねぇ。レオネル様の本来の仕事はこっちじゃないんだし」
追い討ちをかけてくるケイトの攻撃にレオネルは小さくうなり声をあげた。
「……仕方ないだろう。表向き、俺は宰相の側近だ。仕事は嫌でも回ってくる」
それはレオネルの能力の高さをかった宰相が多く仕事を回しているだけじゃないか、とケイトは思うが、レオネルもわかっているだろうことを敢えて口にするようなことはしない。