失礼ですが、強い女はお嫌いですか?


空は雲ひとつない快晴で、風も穏やか。
そのためか、道を歩く人の数も多く、リリエラの目は忙しなく右へ左へと動く。

とりあえず金髪の人物を片っ端から探していこうと決め、視界に入る金髪を虱潰しに観察していた。

捜索中、時々顔見知りに会い、声をかけられる。学校に通う子供だったり、親だったり、よく行く店の店主だったり、色々だ。

挨拶をしてきたり、世間話をしていったりと思い思いの言葉をかけてくる。
満面の笑みを浮かべ、親しげに話しかけられると、リリエラの表情は自然と緩む。

皆、教師としてのリリエラしか知らない。『相談屋』のことも、ましてや貴族だったことも知らない。
ただ同じ町に住む仲間として受け入れてくれる。その優しさにリリエラは何度も救われた。何もかもを捨ててきたリリエラ達家族を当たり前のように迎え入れてくれる。

貴族令嬢の時は感じられなかった。温かさの裏には必ず冷酷な何かが見え隠れして、人を疑うことに慣れてしまっていた気さえする。
いや、結果だけ見れば、リリエラ達はその冷酷な部分を見抜けず、全てを奪われた。全て……地位だけじゃない。人を信じる心も全てだ。

けれど、今、リリエラがこうして立っていられるのも、信じられなくなっていた人間に救われてなのだから、不思議なものである。

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