失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
リリエラのひとつ年上の彼は、リリエラよりも体が小さく、力もなかった。
最初こそ猫をかぶり、大人しくしていたリリエラだったが、すぐに化けの皮が剥がれ、彼を引っ張り回し、たくさん泣かせた記憶がある。
遊び相手としてちょうど良かった。それに尽きる。
剣術なども一緒に母から学んだ。彼は決してリリエラが令嬢らしくなくても馬鹿にしなかったし、感心し、褒めてくれさえした。
歳月が経つにつれ、彼は来なくなったが、貴族社会では、家族以外で唯一、本来のリリエラを受け入れた人かもしれない。
リリエラは想いを馳せながら、首にかけていた『女神の涙』の捨て石がついたネックレスを指先で摘まむ。
きっと彼は、現在のリリエラの姿に驚くだろう。ぎょっとした顔の彼を思い浮かべて、リリエラの口から小さな笑い声がこぼれでる。
とはいえ、もう二度と会うこともないだろうが。
「あの」
辺りへの意識が薄れていたリリエラに突然声がかかる。
リリエラはびくりと肩を揺らし、慌てて顔を上げた。