失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
リリエラはハッと息をのむ。
「隣……あいてますか?」
ほんわかとした空気を纏う人だった。大きくて僅かに下がった目尻が印象を和らげる。
だけど、リリエラには関係なかった。リリエラの視線を釘付けにしたものは、顔立ちなんかじゃなく、視界に広がるサラサラと揺れる肩の高さで切り揃えられた金色の髪。
「どうぞ」
にこりとリリエラが笑い返せば、相手も笑い返してくる。
線が細く、穏やかな空気を纏う男。普段ならば、親しみやすいな、くらいにしか思わなかったかもしれない。
しかし、金色で長髪の男という情報しかない今、簡単に除外するのは望ましくない。
人は見た目や仕草からある程度、相手の人柄を予想する。特に犯罪に荷担しているともなれば、少なからず非社会的な面があるかもと想像したりするだろう。
だが案外、イメージと違うなんてよくあることだ。貴族社会でも、この仕事の中でも、嫌というほど見てきているリリエラには、目の前の人物が犯人ではないと判断できる決定的な要素が足りなかった。