失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
「散歩日和ですね」
「ええ、とても。観光の方ですか?」
「いえ、仕事でちょっと立ち寄ったんです」
「ふふふーーそうですよね。この町に観光するところなんてないですし」
どうでもよさそうな世間話だけが進んでいく。
親しみやすい声色で、自分のことを警戒する素振りもなく教えてくれた。笑顔だって好感が持てて、不快感を感じない。
ああ、これは女性が警戒心をといてしまうタイプの人だな、とリリエラは思った。
「地元の方ですか?」
「ええ」
「実は僕、商人をしてまして」
「そうなんですか!?」
リリエラは大袈裟に驚いて見せる。すると、男は頭を軽く抱えながら「やっぱり見えませんかー」と自虐的に笑った。
「いや、見えませんよね? 僕、いつも実年齢より幼く見られちゃって……仲間にも貫禄がないって言われます」
「すみません! そういうつもりじゃ……私、商人の人に会ったことがなくてーーすみません」
「いえいえ、謝らないでください。貴女が悪いことなど一つもないんですから。実際、幼く見えることで得したこと、たくさんありますしね」
恐縮したように身を縮めるリリエラに、男はおどけて見せる。
リリエラはふっと笑い声を漏らした。男はその変化を見逃さず、リリエラよりも大きな声で笑う。