失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
アパートと再会
大きな通りから一本奥に入った場所にある、古びた一軒のアパート。
土壁に塗装された薄黄色の塗料は所々剥げ、窓やドアの立て付けが悪く、空き間風もある。
申し訳程度に設けられた小さな台所とトイレはあるが、当然のようにシャワー室なんてものはなく、部屋の広さもベッドや机を置くと手狭だ。
とはいえ、若干の寒さは感じるものの、独り暮らしならば十分な広さ。文句など言うまい。
「さすがに暮らすとなると火や水が使えてほしいけどね」
リリエラは部屋の中を見回しながらポツリと告げた。
その言葉に苦笑いを返したのは、リリエラから連絡を受けてやって来ていたセイレーンだ。
「……まぁ、暮らすならそうだね。でも、寝泊まりだけなら十分だよ」
「贅沢なくらいよね」
確認するようにベッドへ腰を落とし、何度か軽く跳ねているリリエラを他所に、セイレーンは眼鏡の位置を直すと再び作業へ戻る。
セイレーンの回りには相棒の工具たちが綺麗に並べられ、自分の出番を今か今かと待っていた。