翼の折れた鳥たちは
prologue


今にも雨が降り出しそうな厚ぼったい雨雲。

遠くから、雷の音がゴロゴロと聞こえる。

きっと、これから始まる困難を教えようとしていたのかもしれない。




夕暮れを過ぎて辺りが夜の空気を纏い始めた時刻。

明日から始まる新しい生活に期待と、それから不安を抱えながら走っていた。



一瞬、ほんの一瞬の出来事。

向こうから照らされた眩いライトに目がくらんで、身体が宙を舞った。


白い光に全身が包まれた。


翼なんて持ってはいないのに、身体が投げ出されて―――




そして、堕ちた。


翼が折れた瞬間だった。

< 1 / 290 >

この作品をシェア

pagetop