翼の折れた鳥たちは
「バスケが出来なくなった俺に希望を与えたのが担当していた理学療法士の先生だったんだ」

敦也くんの瞳には、バスケが出来なくなった悲しさや淋しさなんてものは無くて、キラキラとしている。

「かっこよかったんだ。『お前の膝は俺が治す』なんて言って。しかもリハビリめっちゃ厳しくて。部活よりしんどかった」

敦也くんの表情は、生き生きとしてる。
太陽みたいに笑って、私はつい彼の笑顔を見つめてしまった。


「って、葵ちゃんじゃないけど、俺のエピソードも理学療法士あるあるだよね」

「えっ、えっと……」

敦也くんに見惚れていたことに気が付いて、私は焦る。

「ほら、自分が怪我してお世話になった理学療法士に憧れて、目指すパターン」

「う、うん。そっ、そうだね」

返事をする私の声は明らかに上擦ってしまう。

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