翼の折れた鳥たちは

「ドクターに聞くのは怖いんだ。『歩けない』と言われると、それが現実だって受け入れるしかないから。だけど、葵ちゃんなら。葵ちゃんの答えなら受け入れることが出来る気もするし、『まだ新人の葵ちゃんの答え』なんだって思うことも出来る気がする。これって逃げてるよね?」


敦也くんは涙1つ見せていないのに、泣いているように感じる。
部長は敦也くんの話を静かに聞いて、小さく首を横に振る。

「今はそれでいいんだよ。敦也くん」

部長の言葉は静かで、暖かくて、それでいて誰もが納得するような真の強さがあった。

「敦也くんは今、星原さんに質問したのは逃げだと言ったよね?星原さんだって、その質問に対して答えることを逃げた。そして僕も今から喋ることはただの理学療法士の考えの1つで、敦也くんに対しての逃げなんだと思う」

敦也くんはそんな部長の言葉に息を呑んだ。

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