翼の折れた鳥たちは
◇◇◇
「星原さん、だからさぁ……」
土曜日のお昼を過ぎた頃、午前中に仕事を終えて部長に敦也くんの歩行訓練の手順を指導してもらう。
部長とリハビリ室に二人きりで手技を教わっているけれど、頭の中は次のオーディションの曲目のことで頭がいっぱい。
きっとそんな余計なこと考えていることを、部長は見破った。
「星原さん、もう今日はやめておこう。星原さんが集中できるときに、また声かけて」
じゃ、お疲れ。
冷たくそう言うと、私が声をかけることも、追いかけることさえ与えられないほど足早に部長はリハビリ室を後にした。
唄のこと考えてばっかりいないで、集中しないと。
部長にちゃんと謝らなきゃ。
そう自分に言い聞かせるけれど、やっぱり浮かんでくるのはオーディションのことばかりだった。