翼の折れた鳥たちは

「んで、何してたの?葵ちゃん」

「あぁ、部長に敦也くんの歩行訓練教えてもらって、その後一人でボイストレーニングがてら筋トレ」

私服でこんなことしてる姿を、敦也くんに目撃されるとは思ってなくて、顔が一気に熱を帯びる。

「葵ちゃん、ボイストレーニングまでするなんて本当に歌が好きなんだね。昨日も歌ってたもんね」

「やっぱり聞いてたんだ」

「もちろんだよ。感動した」

昨日のオレンジ色の夕日の中で歌った曲は、敦也くんに向けて歌ったもの。

『感動した』なんて敦也くんに言われると、くすぐったくって仕方ない。

「ありがと」

素直にお礼を伝えたけど、少しだけ声が上擦ってしまった。
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