翼の折れた鳥たちは
「落ちてばっかりなんだけどね」

体育座りしながら、敦也くんの横で自分のつま先を見つめる。

「俺は葵ちゃんの歌、好きなんだけどな。世の中厳しいんだな」

ダンベルを何度も持ち上げながら、励ますように話しかけてくれる。

「で、でもね。この間2次オーディション受かって、来月3次オーディション受けるんだ」

あぁ、私どうしてこんなことまで敦也くんにペラペラ喋ってんだろう。

「それって、全国規模のオーディションでしょ?テレビで何度か見たことある!!すごいじゃん!!」

私の考えなんて知らない敦也くんは諸手をあげて喜んでくれるから、私までつられて笑ってします。

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