翼の折れた鳥たちは
「ねぇ、敦也くん。歌手になるってそう簡単なことじゃないんだよ?運よく歌手になることが出来たとしても売れるとは限らないし、それで生活していくことが出来る人間なんてほんの一握りなんだよ」

「それで?」

「昼も夜も関係ない生活になるし、有名になれば誰に何言われるか分からない。いつか歌を書いたり、曲を作ることだって自分の心が枯渇して出来なくなることだってあるかもしれないし」

うろたえた私は、思いのたけを吐き出すように敦也くんに向かって喋る。

しばらく私の話を黙りこくって聞いていた敦也くんが、ふいに顔を綻ばせたかと思うと言葉を唇の隙間から漏らすように呟いた。

「なぁんだ。葵ちゃんも俺と一緒じゃん」

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