翼の折れた鳥たちは
8
『何をそんなに怖がってるの?』
あの日、敦也くんに言われた言葉は、小さな棘みたいに心の奥に刺さって、なかなか取れないでいて、困る。
だって歌うたびに、あの言葉が頭の中で何度も蘇ってくるんだもん。
はぁぁ。
今日は浮かない私の心とは正反対になるくらい晴天だった。向こうの空には入道雲。
少し涼しくなった夕暮れの屋上で数曲歌ってみたけれど、なんだか集中できなくって早めに切り上げた。
「外の世界に飛び出すことなんて怖がってるのは、敦也くんの方じゃん……」
屋上のベンチに身体を預ける様に座ると、口からポロリと零れる気持ち。
私は怖がってなんてないよ。
そんなことを自分に言い聞かせるように呟いていた。