翼の折れた鳥たちは
「だけど、もしバスケ見に行くことが出来たらきっと敦也くんの自信に繋がるよね?」
入院した頃よりも随分と大きくなった背中に向かって私は叫ぶように声をかけると、車いすを漕いでいた敦也くんの手が止まる。
「敦也くんの世界は、またきっと広がるよね?」
敦也くんの背中に、もう一度私の叫びをぶつける。
こんな病院の中なんかじゃなくて、敦也くんは太陽の下が似合うんだよ。
私はそんな思いを込めて言葉をぶつけていた。
敦也くんは私の方を振り返らなかった。
右手を小さく上げて、ひらひらと振っただけだった。
空は段々とオレンジ色の夕焼けに染まり始めていたのだった。