翼の折れた鳥たちは

「ちょっとその日は……」

だって、その日はようやく受ける権利を獲得した3次オーディション当日なんだもん。

『そうよね。予定あるわよね?ごめんなさいね。休みだってことはリハ部長からお聞きしていたのだけれど、ダメもとで……』

「ごめんなさい。私が言い出しっぺなのに」


受話器を持ったまま、思い切り頭を下げる。

『いえ、まさか観戦日が前倒しになるなんて思ってもみなかったから仕方ないわ。だけど、これじゃあ、中止するしかないかもしれないわ』

えっ、そんなぁ。それじゃあ、敦也くんが悲しんでしまう。

前田さんが申し訳なさそうに言った言葉が私の胸に重りのように圧し掛かる。


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