翼の折れた鳥たちは

「前田さん」

朝礼前にぞろぞろと集まってきたスタッフの中に、前田さんの姿を見つけ出すと私は声をかける。

「前田さん!!私、バスケ観戦同行します。同行、させてください」


私の仕事は『理学療法士』だ。
『歌手』なんて高校生の頃に諦めたじゃない。何を今さら……。


自分に何度も言い聞かせて出した答えに前田さんは私の両手を握りしめてブンブンと大きく振って喜びを表現する。

「ありがとう、星原さん」

「これで敦也くん、バスケを観戦することが出来ますね」

私が何気なく放った言葉のせいで、前田さんの顔色が険しくなる。

「それがね、やっぱりボランティアが集まらないの」

喜びを体中で発信していた前田さんが、一気にしょぼんとなった。

だけど、ボランティアのことだって私には考えがあったんだ。

「前田さん、ボランティアの件も私に任せてもらえませんか?」

私の提案に前田さんは戸惑った表情を浮かべながらも何度か首を縦に振るしか出来ない様子だった。
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