翼の折れた鳥たちは
マット上での自主訓練を終えた敦也くんは車いすに乗り込むと、私と一緒にリハビリ室のカウンターで業者を待つ。

担当患者の車いすを制作することなんて初めてのことで私だって緊張している。

けれど、目の前に座って頬杖をついて業者を待っている敦也くんは私以上に緊張している様子で、表情を強ばらせ口数は少ない。


「こんにちはー」

いつも饒舌な敦也くんが緊張して口数が少ないせいで、なんだか静かなリハビリ室に明るい声が響き渡った。

「こんにち……は」


待ちに待った業者の方がリハビリ室に入ってきて、挨拶を返そうとした私は一瞬、たじろいだ。


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