翼の折れた鳥たちは

「以前、尋ねた質問覚えてるかな?星原さんが将来を考える時期なんじゃないかって指摘したこと」

もちろんだ。

答えを保留にしたまま、敦也くんの担当理学療法士になったんだから。

「理学療法士なのか?それとも、歌手なのか?」

このタイミングで、部長に尋ねられるなんて思ってもいなくて動揺する。


一気に汗が噴き出すのが分かる。


「歌は嫌いになれません。歌を辞めるってことを選ぶと、後悔するだろうなって思ってます」

声が震える。
目の前の部長は、静かに私の話を聞いてくれる。

「だけど敦也くんに出会ってから理学療法士って素敵な仕事だなって改めて思いました。誰かに寄り添って、自立を支援するってすごいことだなって思います」

「そうだな」

部長の声は少し嬉しそうだ。

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