翼の折れた鳥たちは
◇◇◇

テラスのウッドチェアに座って、外の風を感じる。

夕方差し迫る時間にいつも外を眺めるだけで通り過ぎるテラスで過ごすなんて初めてだ。

勤務中だというのに、敦也くんがテラスで車いすの駆動訓練を行っている様子をぼんやりと眺めてた。


「葵ちゃん。俺さ、この病院に入院出来て良かったよ」

私が座る場所から一番遠い場所まで車いすを漕いだ敦也くんが、振り返って私に叫ぶ。

少しだけ照れ臭そうにはにかんでるのが、遠くからでも分かって思わず小さく吹き出した。


「葵ちゃんにも出会えた。それに夢も出来たんだ」


夢……?

敦也くんの言葉を胸の中で繰り返す。


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