翼の折れた鳥たちは
「お礼なんてまだ早いよ。あと10日もあるんだから最後のリハビリの仕上げ一緒に頑張ろうね」

私の強がりなんてきっとバレバレだ。

敦也くんが私を見守ってくれているような笑顔で見つめている。

「オッケー。俺、頑張るよ」

頑張るなんて言うことも、励ます言葉をかけることさえ躊躇ってしまっていた入院直後の敦也くんとは、今はもう別人みたいだ。


敦也くんがテラスから病棟へ戻ろうと車いすの方向転換した背中を眺めながらそんなことが頭を掠める。

背中、逞しくなったな。

毎日のリハビリと自主訓練のおかげで、隆々とした両肩から肩甲骨回りそれから腕の筋肉は、頼りがいのある背中に変わった。


お礼を言うのは、私の方だ。


ふと頭に沸き起こった想いに突き動かされるように、私はその逞しくなった背中に声をかける。

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