翼の折れた鳥たちは
病院の玄関には、看護師長やリハビリ部長、それから栄養部の前田さんが敦也くんの退院を見送ろうとみんなが集まっていた。


きっと目が真っ赤だったのは私だけじゃなくて、看護師長だって同じみたいだ。


「本当にお世話になりました」

敦也くんの両親が揃って頭を下げる。

それに合わせて、敦也くんも向かい合っていた私たち病院スタッフも頭を下げる。


「喜ばしいことなのに、淋しくなるわね」

看護師長が私の隣で、鼻を啜りながらそんなことを呟く。

「そうですね」

返事をしたのは私、ではなく私の隣に並んでいた部長だ。

部長の横顔を覗き見ると、瞳が潤んでいるように見えたのはきっと気のせいなんかじゃない気がした。


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