翼の折れた鳥たちは



「じゃあ、皆さんありがとうございました」

敦也くんのために購入したらしい敦也くんのお父さんの車に乗り込んだ敦也くんが後部座席の窓から顔を覗かせる。


「頑張ってね」

「いつでも会いにおいで」

スタッフがそれぞれに声をかける。


敦也くんの表情は曇りなく晴れわたっている。

「じゃあね、葵ちゃん」

敦也くんが手を振る。

「うん。ありがとうね、敦也くん」

私は小さく手を振り返す。

「じゃあ、ばいばい」

敦也くんは満面の笑顔で手を振った。


病院前のロータリーを出発した車は、いつの間にか小さく見えなくなった。

私達はいつまでも、いつまでも敦也くんが乗り込んだ車を見つめていた。
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