翼の折れた鳥たちは
1人になった夕暮れを過ぎたリハビリ室のマットに腰を下ろす。

ここはよく敦也くんが自主訓練していた場所だ。

私は『病院スタッフ一同様』と癖のある文字で書かれた方の封筒から手紙を取り出し読み始めた。


『 永島病院のみなさまへ


入院中は大変お世話になりました。

直接会ってお礼を伝えたいのですが、どうしても僕は恥ずかしくって冗談しか言えないので手紙を書くことにしました』


敦也くんの照れて、ふざけている様子が目に浮かんできて思わず吹き出してしまう。


『病院を退院して1か月が経ちました。

退院してからは毎日の生活に慣れることに必死でした。

ゼロからのリスタートだって思っていのにマイナス1からのスタートだったってことに気が付いて、心が折れそうになる日もたくさんありました』

敦也くんの悪戦苦闘している様子を想像すると、胸が苦しくなる。

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