翼の折れた鳥たちは
1カ月ぶりの屋上は、いつもと変わらない景色のまま。
夕やみが迫っている時刻、オレンジ色の夕焼けを藍色の闇が覆いかぶそうとしていた。
来ることを避けていた屋上は、なにも変わってなんかなかった。
敦也くんの手紙を読むならここしかない。
なんだかそんな気がして、自然と屋上に足が向いていたんだ。
柔らかな風が吹き抜ける屋上にあるベンチに座り、ゆっくりと先ほど部長から手渡された手紙を開ける。
『星原 葵様』
一画、一画力強く書かれた、少し右上がりの癖のある字。
敦也くんが退院した日の青空みたいな水色の便せん。
私はゆっくりとその手紙を読み始めた。