翼の折れた鳥たちは
敦也くんからの心を震わす熱い手紙。

ううん、敦也くんからシンガーソングライター星原葵へのファンレターには、私の涙でいくつものシミが出来てしまっていた。

私はしばらく、その場から動くことが出来ないでいた。


もう夕焼けなんてみえなくて、空には星が瞬いている。


「敦也くん、ずるいよ」

敦也くんの言葉にこそ、私を突き動かすパワーがあるっていうのに。


私は、誰も居ない屋上でぽつりと呟いた。

「私も飛び出してみたい……」


心の奥から出た一言。

その言葉は、夜の柔らかな風にさらわれるように流れて、夜の闇へと静かに消えていった。


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