翼の折れた鳥たちは
敦也くんの手紙を読んだ翌日のこと。

私は朝一番に部長に一通の書類を手渡した。


「『退職願』?!本気なのか?星原さん」

目を真ん丸にした部長が言葉を詰まらせて手渡した退職願と私の顔を何度も何度も行ったり来たりさせたんだった。

「部長には先日、理学療法士を頑張りたいってお話させていただきましたが、やっぱりどうしても……」


「分かってる。諦めきれないんだろう?」


次の言葉を考えあぐねていた私に、部長がはっきりとそう言った。

責め立てているような視線ではなく、その眼差しは穏やかで、お父さんみたいだ。

「歌手、本気で目指したいって思ってます」


もう悩まない。
昨日一晩考えて、そう決めたんだもん。


決めたことに、後悔なんてない。


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