翼の折れた鳥たちは
「いつか、星原さんが歌手になりたいって言いだす日が来ると思ってたよ。遅かれ早かれ、こんな日が来ることは覚悟してた。敦也くんからの手紙を読んだ時、その時期が近いことも分かったんだ」

部長はそう言ってにっこりと笑った。


「迷惑かけて、ごめんなさい」


「謝らなくてもいい。星原さん、君の人生なんだ。後悔しないように頑張りなさい。そして戻ってきたくなったらいつでも戻ってきていいから」


頭を下げた私を制するように、部長が放った一言は私の胸を震わせる。



それから、部長は退職をすぐに受理してくれた。

人員不足だと嘆くスタッフをなだめてくれて、少ない有給休暇も取得できるように最大限努力してくれた。


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