翼の折れた鳥たちは
epilogue

勤務最終日。

リハビリ室で開かれた小さな送別会を終えた私は、頂いた花束を自分のデスクに置く。

「屋上、行ってきます。これが最後なので」

部長に一声かけると、部長は大きく頷いた。

「テラスで聞いておこうかな。未来の売れっ子歌手の歌声を」

冗談めかしてそう言った部長に、私は思わず吹き出してしまった。



駆け足で屋上へと繋がる階段を駆け上がる。


屋上の重たい金属製の扉を開けると、一気に透明な空気が体内へと入り込んでくる。

今日もいつもと変わらないこの場所。

私の大切な原点。


だけど、今日でここで歌うことも最後。

私は、心を込めて静かに歌い始める。


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