翼の折れた鳥たちは
3
「敦也君、体調悪くない?」
「えぇ」
ナースステーション前に置かれた俺の目の前を病棟のスタッフがバタバタと動いている。
その様子をぼんやり眺めていると、ふいに看護師長に顔を覗き込まれて尋ねられた。
俺の両親より少しだけ年上に見える、少し白髪の混じった看護師長は最近俺のことを『敦也くん』と呼ぶ。
あぁ、看護師長だけじゃない。
この病棟のスタッフに、最近俺は『榎田さん』ではなく『敦也くん』と下の名前で呼ばれることが多くなってきた。
なんでも清掃スタッフのおじちゃんに『榎田さん』がいるらしい。
俺と同じ苗字、あんまり会ったことないんだけどな。
紛らわしいってことで、俺のことをみんな『敦也くん』と呼ぶ。
まぁ、そんなことなんてどうでもいいけど。