翼の折れた鳥たちは
「あっ、ありがとう」

大きく高鳴る胸の鼓動を押さえながらお礼を伝える。

「お礼を言うのは、こっちだよ」

榎田さんは視線を窓の方へ移動させて、ぽつりとそう言った。


「うん」

なんと答えていいか分からなくって、小さくそう呟いて、目の前にある長い榎田さんの下肢の関節可動域訓練に集中する。


「歌手じゃなくて、理学療法士になってよかった?」

ふと、榎田さんが私の手技を眺めながら尋ねる。


「まだ2年目だからね」

理学療法士になってよかったかなんて、答えられなかった。

理学療法士を選んだことに後悔なんてない。

だけど……。


正直な気持ちを今の状況で榎田さんに吐露するわけにはいかなくって、無理矢理口角を上げて、そんな言葉でごまかした。


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