翼の折れた鳥たちは
5
「葵ちゃん、俺、今日何時からリハビリ?カウンセリングが10時からあるんだってさ」
「えっと、それじゃあ11時くらいでいいですか?リハビリ室までご自分で来れますか?」
「オッケー」
病室でリハビリを行ってから、2週間程たったとても天気の良い朝のこと。
朝礼が終わり、申し送りを受けるために病棟に上がると、敦也くんが私に近づいてきて喋りかける。
私のことを『葵ちゃん』と呼んだから、申し送りに集まり始めた看護師が一瞬ざわついた。
敦也くんは日を追うごとに感情豊かになって、明るさを取り戻しているのがわかる。
先週のカンファレンスで、カウンセラーを担当している臨床心理士の先生も、『徐々に現実を受け入れることが出来てきている』って発言してたっけ。
明るさを取り戻しているのはとてもいいことなんだけど……。
3日前にあんなこと言わなければ、よかった。
あぁ、どうしてこんなことになったんだろう。
私は一瞬ざわついた看護師たちから向けられた視線に小さくなりながら頭を抱えた。