盲目のヴァンパイアがいる

それから10日が経ち、満月の日になった。その日は朝からアビゲイルが人程の大きい箱を持って若奈の家に来た。

「その大きい箱ってなんですか?」

「これ?これはあなたの棺桶よ。デイビット、若奈をちゃんとヴァンパイアにするのよ?晴れてヴァンパイアになったら、連絡よこしなさいね、では私はイギリスに帰るわね」

アビゲイルは大きい箱を玄関先に置いて、イギリスに帰っていった。

「棺桶は俺様が部屋に運んでやる」

「うん、ありがとう」

若奈の自室にデイビットは大きい箱を軽々と運んでいった。

「どんな棺桶かな…」

「まあ、母さんの趣味だと少し派手になると思うが…」

「開けてみれば分かるよね」

若奈はそう言って、大きい箱を開けた。

「わー、素敵ー!全然派手じゃない!」

「だな、若奈のだから控えめにしたんだろうな」

棺桶は若奈が丁度入る大きさで、色は赤茶系で、四隅には少し彫りの装飾がされていた、真ん中より上の方には宝石が1つ付いていた。

準備が整い、そして夜になり、若奈の部屋に2人は居た。

「若奈、最後に聞くが、本当にいいんだな?」

「勿論よ」

「じゃあ、噛むぞ」

デイビットはそう言って、若奈の首元に顔を埋め噛みそして、ヴァンパイアになる毒を若奈の身体に入れた。

「うあ…」

若奈はすぐに気を失った、デイビットは若奈を棺桶の中に入れ蓋を閉じた。

その時、雪奈が部屋に入ってきた。

「若奈は?」

「この中だ」

デイビットは棺桶を指した。

「そう、何時出てくるの?」

「それは俺様にも分からない、個人差があるんだ」

「分かったわ、出てきたら連絡頂戴ね」

雪奈は自室に戻っていった。

「若奈、俺様が守ってやるからな」

デイビットは若奈の部屋全体を結界で包んだ。





それから3ヵ月後の夜、若奈が入っている棺桶が微かに動いた。

「…っ」

その時、デイビットは微かに動いたが、ただ棺桶が動いているのを見ていた。

棺桶が動いてから1時間程たって突然動きが止まった。

「…頑張れ若奈」

デイビットが話かけると棺桶がまた動き出して、蓋が少し開き白い手が見えてすぐに蓋が外れた。

棺桶から若奈が現れた、若奈はフラフラと、大人しく座っているデイビットに近づいて行った。

「来い若奈」

若奈はデイビットの首元に顔を埋め、牙を立てて血を吸い始めた。

しばらくしてデイビットの首元から離れた。

「…はっ!あれ?」

「若奈!」

デイビットは若奈を抱きしめた。

「私ヴァンパイアになれた?」

「おう、なれたぜ…よかった」

「私どれくらい、寝てた?」

「約3ヶ月だな」

「そんなに!?」

若奈はデイビットの言葉に驚く。

「雪奈に連絡しないとな」

「そうだね、連絡してみるよ」

若奈はデイビットから離れて電話をしはじめた。

「デイビット、明日帰ってくるって」

「分かった、俺様は母さんに手紙を書いとくわ」

デイビットはさっそく手紙を書いた。






次の日のお昼時に雪奈が帰ってきた。

「若奈、やっとヴァンパイアになったのね、それに出てくるまで長かったわね」

「若奈は早い方だな、俺様が知ってる中では半年とかあったな…」

「「は、半年!?長っ!」」

デイビットの言葉に若奈と雪奈は驚いた。

「ヴァンパイアにとったら、短いもんだな」

「なるほどねー」

雪奈は頷いた。





それから数日後、若奈達のもとにアビゲイルからの手紙が届いた。

「アビゲイルさんから何て?」

「同族になれて嬉しいってのと、1度イギリスに来いってさ」

「そっか受け入れてくれて嬉しいな!イギリスかーパスポート大丈夫かな…」

「よかったな若奈」

2人は笑いあった。
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