混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「私は、リリと結婚するつもりは無いよ、もう何度も言っているけれど」

 さすがにガブリエルも疲労で視点が定まっていない。

 既にもう何度も同じやりとりが繰り返されていたのだろう、それでも、リリはあきらめきれずに問い続けた。

「何故私ではダメなんだ、確かに私は軍人で、女らしくないかもしれないが、イザード造船社長の妻として、お前を支える自信はある」

 もう、何度も繰り返されたやりとりだった。

 何度尋ねても、何度言っても、ガブリエルの答えは変わらない。

「私は、妻に対して何かしらの役割を求めていないんだよ、ただ、『愛する事のできる相手』、望んでいるのはそれだけだ」

「私はお前に『愛される』に足りないというのか」

 それも、何度も繰り返されたやりとりだった。

 苦々しいリリの顔、耐えられないという様子のガブリエル。そもそも、リリが愛しているのは自分では無いと、何度言っても納得してもらえない事には閉口した。

 何故、他の男を愛している女から、結婚を迫られなくてはならないのだろう、ガブリエルは理不尽さに打ち震えていた。

 リリは、優秀な軍人であり、生まれもった役割に対して、禁欲的にすぎる。

 ガブリエルに、思う相手が居なければ、リリの忠義に協力できたのだろうか。ガブリエルは自答したが、やはり答えは否なのだ。

「ガブ……」

 リエル、と、続く予定だったリリの言葉は轟音で遮られた。

 大きなもの同士がぶつかり合うような大きな音に、リリもガブリエルのギクリとして、動きが止まった。

 音は上の階から聞こえてきた。

 リリはガブリエルを一瞥し、名残惜しそうに上を向き、言った。

「すぐに戻ってくる、そのまま待っていろ」
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