混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「え? 何? 今、何が起こった?」

 したたかに顔面を蹴られて、マイケルが飛び起きる。

「顔がッ! 顔が痛い! 君! 僕の顔に何をしたああッ!」

 説明するのも面倒で、アレンはマイケルに対して何をしたかについては何も言わず、質問に対して質問で返した。

「何をしたか? それはこちらが言いたい、なんだって僕の両手両足が拘束されて、君と同衾しなきゃならんのだ、説明して欲しいのはこっちだ!」

 甲についたマイケルの唾液をそっとシーツにこすりつけながら、アレンが毒づく。

 マイケルの方も一気に覚醒したせいか、昨夜の出来事を思い出したのか、顔を蹴られた事についてはそれ以上言及せずに、着衣の乱れを整えた。

 だらしない様を女性だけでなく、誰に対しても見せまいとする伊達男ぶりにアレンはわずかに尊敬を覚えた。

「悪いが、船が出るまで、君にはここにいてもらう、『青い不死鳥号』が出港し、イザベラ嬢、いや、イライザ嬢と言うべきか? 彼女が船に乗らなかった事を確認できたら、君らを解放するよ」

「どういう事だ? 何故イザベラの、イライザの仕事を邪魔しようとする? 縁談を壊す為にあの娘の仕事の邪魔をする必要は無いだろう?」

「さあ、僕はそこまで聞いてない、リリが言うとおりに、ひいては、彼女の義父が望む通りにするだけさ」
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