混戦クルーズ！ 造船王は求婚相手を逃さない

「どういうつもりだ？」

　もしや、今の問いかけは、マイケルの心の柔らかい部分を刺激してしまったのだろうか、アレンは思った。

「……だったら、どうだというんだ」

　それは、絞りだすような声だった。何故、マイケルはここまで動揺するのか、少し考えればわかる事だった。アレンは、しかし、『その事』に気づいた事は言わずにいた。

　そう考えると、存外このマイケルという男は、一途なところがあるのかもしれない、不思議と、手足を拘束されて、怒っていいはずのこの時に、アレンはマイケルという男に何ともいえない共感のような感情を覚えた。

「あんたはそれでいいのか」

　アレンの言葉が、研ぎ澄まされた刃のようにマイケルの心中を切り裂く。

　マイケルは、即答できず、口をつぐんだ。わずかに涙が浮かんでいるようにも見える。

「……ああ、いいさ、それが彼女の望みならば、僕はそれで」

　マイケルの涙がアレンの頬に落ちかかる。

　整っった顔のマイケルが、美しい顔を歪ませて、感情を押し殺すこともできないほどに、苦悩しているというのだろうか、と、アレンも言葉を詰まらせる。

　何かを言わなくては、と、口を開こうとした時に、どおおおおおおおおん！　と、大きな音がした。音は近く、隣の部屋からのようで、音と共に壁も揺れた。

「何だ、今の音は！」

　そう言って、身を起こすマイケルは、元の通りの整った顔立ちの伊達男に戻っていた。

「おい！　ちょっと待て、僕の拘束を解いていけ、おおおおいッ！」