混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 乗船の時間はせまり、一刻も早く港へ向かわなくてはならないところであるというのに、その場は膠着状態にあった。

 船に戻りたいイライザ、船に乗せたくないリリ。
 自らは船に戻ろうと考えつつ、ガブリエルを残そうとするマイケル。

 ……そして、なかばどうでもよくなりつつ、両手両足を伸ばして熟睡したいアレン。

「友達になれたって、思ってたんだけどな……」

 イライザが、寂しそうにリリに言った。

「私も、イザベラがイライザだなんて思わなかった」

 リリも、迷っている様子を見せた。

「ならば話は簡単だ、イライザ嬢が縁談を放棄すればいいだけの話じゃないか」

 しれっと自分のよいように話を進めようとするマイケル。

「待て、そうしたら、私の気持ちはどうなるんだ」

 憤慨するガブリエル。

 ……アレンは、心底面倒になっていた。アレンとしては、イライザの望みをこそ、叶えたいと考えている。だが、船に乗って旅行記執筆を続ける事が、本当に彼女の本意なのか、それを確かめる時間はもう無さそうだった。
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