混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「あーーーーー、もう、好き勝手てんでんばらばらに、もう、面倒だ」

 解かれた手足をぽきぽきと鳴らしながら、アレンが堪りかねて言った。

「全員、船に乗れ、そして話をしろ、それが一番話が早い」

「なるほど、そうすれば、この場にいる三分の一の願いは叶うということか」

 ガブリエルは、アレンの言葉が名案であるように同意した。

 もともと、リリを除く全員は、船に乗る予定であったのだ。リリの乗船算段さえつけば、時間を稼ぎ、もとい、問題の解決に最も早い。

「あんたも、そっちの方が都合がいいんじゃないのか?」

 アレンが、マイケルに言った。

 アレンは、先ほどのマイケルの様子から、仮説をたてている。その仮説が正しければ、マイケルはリリの乗船に否とは言わないはずだった。

「……まあ、確かに、そうだが……」

 すでにマイケルの気持ちは傾き始めている、と、アレンは感じた。

「では、残りは貴女の意志だけだ、どうだね? レディ・ジェネラル」

 リリは、思ってもいなかった提案に少し驚いているようだった。

「あー、その前に、イザードさん、部屋の用意は可能でしょうか」

「うーん、処女航海で、もちろん予備の部屋の準備はありますが……」

 イザード造船の新造船、その乗船券の入手は困難を極めていた。保安上の理由で予備はあるかもしれないが、それを使いきってしまう事に不安もあるのだろう。

「じゃあ、こうしましょう、レディ・ジェネラルは僕に替わってイライザと同室になっていただいて……」

 アレンは続けた。

「僕はイザード氏かニュートン氏、どちらかのキャビンに混ぜて下さい、……どうせ、広めのキャビンを使っているんでしょう?」

 もったいぶって咳をひとつしてからマイケルが言った。

「ならば、僕の方だな、ガブリエルは上客室は全てゲスト向けにと言って、三等船室を使ってる。……僕は、来客を想定して、広めのキャビンをとらせてもらったから」

 女を連れ込む為か、と、あきれたようにアレンは表情を作ったが、指摘はしなかった。今は時間が惜しかった。

「僕が転がり込む余裕はある、という事ですね、よろしいですか?」

 いろいろと飲み込んだ結果、眉間にシワが出ているのは自覚していたが、アレンは精一杯の笑顔を作って言った。

「……わかった、だが、もう一人女性がいただろう、イライザ嬢のふりをしていた、彼女はどうなる? 今どこにいるんだ」

 イライザとガブリエルが、複雑な顔を作ってアレンを見た。

 アレンは、絶対に言うなよ、という顔を作って、二人を射殺すような視線で薙いでから思った。他はともかく、マイケルに自分が女装していた事実を知られるのは、何となく嫌だ。

 と。
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