混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 波は穏やかで、ララティナ港を出た『青い不死鳥号』は順調に次の目的地に向かっていた。次の港までは8日。

 リリは、長く取っていなかった休暇をまとめてとらされる形での同道で、次の港にある海軍基地から任務に戻る事になっていた。

「リリ……その姿で、行くつもり?」

 恒例の晩餐前に、支度を終えたリリに、イライザは、自分もあまり着るものには頓着しないが、さすがに軍礼装はまずいのではないかと思い、言った。

「……まずかったか、その、一応、正装なのだが……」

「今は休暇中なんでしょう? だったら、もう少し、こう……、あ! そうだ! 転がる子豚亭では、ドレスを着ていたじゃない」

「ああ、あれは、踊り子の装束で、ああ見えても動きやすいんだ」

 言われてイライザは、豊満な胸乳をあらわに、健康的な露出の多い衣装を思い返し、あれはあれでちょっとまずいかもしれないな……と、困っていた。

 軍礼装は、反対に胸を潰し、男装と言ってもさしつかえない様子に対して、酒場の衣装の二択だと、振れ幅が大きすぎる、と、イライザは思った。

「でも、私のドレスだと着丈が……」

 悩むイライザの視界に、キャビン備え付けの衣装入れが目に入った。

「ああ、そうか」

 ぽん、と、思い立って、イライザがニヤリと笑う。

「イ……イライザ?」
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