混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 それは、まごうことなき男性パートであり、ドレスを身にまといながら、動きは、完全に紳士のそれだった。

 優美な、性別を超越したような官能的なダンスに、リリに手をとられた女性は陶然とし、呆けてしまった。

「もしよろしければ、あなたもどうですか? 一曲」

 息をはずませて微笑むリリは美しく、女性ですら、その妖しい美しさに視線を外すことができなかった。

 三人の婦人は、恥じ入った様子で、逃げるようにしてその場を立ち去った。

「……やれやれ、僕らの出番はないみたいだったね」

 二人の手並みに感心しきりといった様子でアレンが言った。

「さて、君たち、結論は出たのかな?」

 アレンが促すと、まずマイケルが動いた。リリの前に跪いて、手をとった。

「レディ、どうか、今夜は僕と」

 リリは、驚き、戸惑った様子でイライザを見た。

 イライザは、小さく握った拳をあげて、激励するように小さく振り上げた。

「……喜んで」

 金色の髪のマイケルと、黒い髪のリリは、光と闇、あるいは、月と太陽もかくやといった見事な一対で、佇んでいるだけで、まるで絵画のような輝きを放っていた。

 二人が立ち去るのを見送ってから、アレンがじれったそうにガブリエルに言った。

「……まあ、おじゃま虫は僕の方かな?」

 そう言って肩をすくめた。

「この船の料理が美味しい事は知っている、やっと堪能できるわけだ」

 と、食い気に決めて、料理の並んだテーブルへ勇んで進んでいった。
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