混戦クルーズ！　造船王は求婚相手を逃さない
　残されたガブリエルとイライザは、落ち着かない様子で付かず離れずの距離で立っていたが、ふいに、イライザに近寄ろうとする男性の姿に気づいたのか、

「海を、見ましょうか」

　と、ガブリエルが、イライザの手をとり、晩餐会会場を後にした。

　外には、名残の太陽が沈もうとしているところだった。キャビンからの移動で、外の様子に気づいていなかったイライザは、想像していなかった外の明るさに一瞬だけ目を細めた。

　圧倒されそうになる夕暮れの空の美しさに、しばらくイライザは見とれた。

「……よかった、あなたに見ていただきたかったので」

　照れたようにガブリエルが言った。

「ありがとうございます」

　暮色の空を背負ったイライザは、沈む太陽よりも、瞬きはじめた一等星のような輝きをもった瞳に、ガブリエルは見とれそうになった。

　イライザは、この夕暮れをどうして言葉に落とし込めばいいのか考える事も忘れて、ただその美しさを全身で感じようと、意識を空へ向けていた。

「あの夜の、事なんですが」

　ふいに、ガブリエルが核心をついてきた。

　言葉の威力に、強制的に意識を向けさせられたイライザは、夕暮れの空に向けていた意識をガブリエルの方へ向けた。

「は、はいっ！」

　頓狂な声をあげながら、イライザが返事をすると、意を決したようにガブリエルが言った。
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