混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「レディ・クリフトン、本日はようこそ、どうですか、あなたが乗船し、大洋に出る船ですよ」
進み来るガブリエルに、周囲が無意識に道を開けた。居並ぶ男性陣の中でも抜きん出た長身の、上の方からよく響く声が降ってきた。
物腰柔らかな表情を浮かべた様子は鷹揚だが、現実は少し異なる。
手段を選ばない冷徹な実業家にして、高い技術には糸目をつけずに投資する。わずか五年で、国内でも一、二を争う造船所へ押し上げた辣腕ぶりに、加えて独身だ。
父も、どうしてこう、よりどりみどりな相手が自分の娘を選ぶと思ったんだろう、と、イライザは思った。政略結婚と考えても、ブルームーン商会には旨味があるが、イザード造船の方にメリットはあるのだろうか、と。
「本日はお招きありがとうございます、ああ、それから、こちらが、ブルームーン商会、ヘンリー・アトキンソン氏の令嬢、イライザ・アトキンソン嬢です」
イライザが、(今はイザベラ・クリフトンだが)女装したアレンをイライザと紹介する。
「はッ、はじめまして、イライザ・アトキンソンです」
第一声を裏返しながらも、アレンは無事に自己紹介をやってのけた。
「ああ、あなたが、イライザ嬢、お父上からお噂はかねがね。 社交シーズンも出てこないという、噂のご令嬢が我がイザード造船のドックにお越しいただけるとは、光栄の至りです」
令嬢、といっても、実業家の娘なのだ、イライザはガブリエルとアレンの茶番をどこか冷めた目で見つめていた。
「……では、それでよろしいですか? レディ・クリフトン」
ガブリエルにふいに声をかけられて、イライザはあわてて返事をした。
「えッ?! あ、ハイ、わかりました」
あきらかに生返事なレディ・クリフトンは、女装したアレンこと、レディ・アトキンソンと共に、ガブリエルに伴われて歩き出した。
「イラ、……イザベラ、いいの?」
「ごめん、ちゃんと話、聞いてなかった」
「だから、『青い不死鳥号』の中を案内してもらうって話だってば」
「ああ、そんな話になってたんだ、じゃあ、アレ、イライザ、後はお二人で」
「ダメだよ、三人でって話になったんだから、というか、僕を一人にする気? ダメだからね、絶対、付き合ってもらうから」
先導するガブリエルの後に女装したアレン、アレンに引きずられる形でイライザの三人は、豪華客船の中へ立ち入っていった。
進み来るガブリエルに、周囲が無意識に道を開けた。居並ぶ男性陣の中でも抜きん出た長身の、上の方からよく響く声が降ってきた。
物腰柔らかな表情を浮かべた様子は鷹揚だが、現実は少し異なる。
手段を選ばない冷徹な実業家にして、高い技術には糸目をつけずに投資する。わずか五年で、国内でも一、二を争う造船所へ押し上げた辣腕ぶりに、加えて独身だ。
父も、どうしてこう、よりどりみどりな相手が自分の娘を選ぶと思ったんだろう、と、イライザは思った。政略結婚と考えても、ブルームーン商会には旨味があるが、イザード造船の方にメリットはあるのだろうか、と。
「本日はお招きありがとうございます、ああ、それから、こちらが、ブルームーン商会、ヘンリー・アトキンソン氏の令嬢、イライザ・アトキンソン嬢です」
イライザが、(今はイザベラ・クリフトンだが)女装したアレンをイライザと紹介する。
「はッ、はじめまして、イライザ・アトキンソンです」
第一声を裏返しながらも、アレンは無事に自己紹介をやってのけた。
「ああ、あなたが、イライザ嬢、お父上からお噂はかねがね。 社交シーズンも出てこないという、噂のご令嬢が我がイザード造船のドックにお越しいただけるとは、光栄の至りです」
令嬢、といっても、実業家の娘なのだ、イライザはガブリエルとアレンの茶番をどこか冷めた目で見つめていた。
「……では、それでよろしいですか? レディ・クリフトン」
ガブリエルにふいに声をかけられて、イライザはあわてて返事をした。
「えッ?! あ、ハイ、わかりました」
あきらかに生返事なレディ・クリフトンは、女装したアレンこと、レディ・アトキンソンと共に、ガブリエルに伴われて歩き出した。
「イラ、……イザベラ、いいの?」
「ごめん、ちゃんと話、聞いてなかった」
「だから、『青い不死鳥号』の中を案内してもらうって話だってば」
「ああ、そんな話になってたんだ、じゃあ、アレ、イライザ、後はお二人で」
「ダメだよ、三人でって話になったんだから、というか、僕を一人にする気? ダメだからね、絶対、付き合ってもらうから」
先導するガブリエルの後に女装したアレン、アレンに引きずられる形でイライザの三人は、豪華客船の中へ立ち入っていった。