混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
5)青い不死鳥号
ドックの中で、まだエンジンは稼働させていない為、船内は暗いものの、イライザとアレンは新造船にいち早く立ち入れた事に少々興奮気味だった。
「ああ……この船が動いている時に乗ってみたかった……」
アレンは、じんわりと感動を噛みしめていた。女装している事すら忘れていそうなアレンの喜びように、イライザは思わず何か言わねば、と、思ったが、アレン以上に船が好きなイライザもまた、初めて乗る巨大客船に興奮気味だ。
「稼働したら、どんなでしょうね……」
しみじみと、船の上で陶然とする女子二人に、ガブリエルは驚きつつ、微笑ましいものを感じていた。
「お二人とも、船がお好きなんですね、レディ・クリフトンも、少しばかり変わった方だと思っておりましたが、さすがはブルームーン商会ご令嬢、レディ・アトキンソンも船がお好きと見える」
「それはもう!」
アレンとイライザは二人で声を揃えて、その船舶愛をとうとうと語り始めた。
巨大船がいかに優美であるか、小型船の小回りの良さもまた捨てがたい。自然の力で動く帆船も、と、ガブリエルが放っておいたら、いつまでも語っていそうな様子だ。
「あ……ッ、すみません、造船業をなさっているイザードさんにこんな話」
声色を忘れてすっかり地の出ているアレンの脇腹をイライザがこづいた。
アレンは痛みをこらえながら涙目でイライザを睨む。
「イライザは、小さな頃から船が好きで」
おかえし、と、ばかりに、アレンがイライザの足を踏む。
「あら、イザベラだって、一日中船さえ見ていたらごきげんだったじゃない」
謎の対抗意識でアレンもイライザの過去を暴くように言う。
「お二人は、どういったご関係で?」
ガブリエルの質問に、思わず、素直に『従兄弟です』と、言ってしまいそうになったアレンの足を、今度はイライザが踏んだ。
「お、幼なじみなんです、ねえ、イライザ?」
「あッ! そう! そうです! 幼なじみで」
「女性のご友人で、どちらも船がお好きとは」
「アレ……イライザは、船だけではないわよね? 鉄道だって、乗り物はなんでも」
「ええ、そうですね、乗り物はなんでも、技術と叡智を感じます」
アレンの笑顔は、女の目から見ても眩しく、そして、熱く語る女装したアレンを、愛おしく見つめるガブリエルを見て、ひそかにイライザはほくそ笑むのだった。
「ああ……この船が動いている時に乗ってみたかった……」
アレンは、じんわりと感動を噛みしめていた。女装している事すら忘れていそうなアレンの喜びように、イライザは思わず何か言わねば、と、思ったが、アレン以上に船が好きなイライザもまた、初めて乗る巨大客船に興奮気味だ。
「稼働したら、どんなでしょうね……」
しみじみと、船の上で陶然とする女子二人に、ガブリエルは驚きつつ、微笑ましいものを感じていた。
「お二人とも、船がお好きなんですね、レディ・クリフトンも、少しばかり変わった方だと思っておりましたが、さすがはブルームーン商会ご令嬢、レディ・アトキンソンも船がお好きと見える」
「それはもう!」
アレンとイライザは二人で声を揃えて、その船舶愛をとうとうと語り始めた。
巨大船がいかに優美であるか、小型船の小回りの良さもまた捨てがたい。自然の力で動く帆船も、と、ガブリエルが放っておいたら、いつまでも語っていそうな様子だ。
「あ……ッ、すみません、造船業をなさっているイザードさんにこんな話」
声色を忘れてすっかり地の出ているアレンの脇腹をイライザがこづいた。
アレンは痛みをこらえながら涙目でイライザを睨む。
「イライザは、小さな頃から船が好きで」
おかえし、と、ばかりに、アレンがイライザの足を踏む。
「あら、イザベラだって、一日中船さえ見ていたらごきげんだったじゃない」
謎の対抗意識でアレンもイライザの過去を暴くように言う。
「お二人は、どういったご関係で?」
ガブリエルの質問に、思わず、素直に『従兄弟です』と、言ってしまいそうになったアレンの足を、今度はイライザが踏んだ。
「お、幼なじみなんです、ねえ、イライザ?」
「あッ! そう! そうです! 幼なじみで」
「女性のご友人で、どちらも船がお好きとは」
「アレ……イライザは、船だけではないわよね? 鉄道だって、乗り物はなんでも」
「ええ、そうですね、乗り物はなんでも、技術と叡智を感じます」
アレンの笑顔は、女の目から見ても眩しく、そして、熱く語る女装したアレンを、愛おしく見つめるガブリエルを見て、ひそかにイライザはほくそ笑むのだった。