混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
8)通りすがりの美青年?!
「それは多分ニュートンだ、マイケル・ニュートン」
イライザが、一旦取材を終えてキャビンに戻ると、アレンはディナー用のドレスに着替えているところだった。
ベッドの上に手持ちの衣装を並べて、組み合わせを考えているところなどは、すっかり開き直っているように見える。何においても全力で手を抜かないところは、アレンの美点だった。
「ニュートン? って?」
アレンに、どちらが似合うか見立てつつ、イライザが答えた。
「イザード氏の部下だよ、イザード造船の社員、立場は何になるんだろう……、広報、とかになるのかな、宣伝に出てくる事が多いかな、取材なんかも彼が受けていたような気がするけど、会ったことは?」
「こっちの業界に絡む人には接点をもたないようにしてるから……」
イライザが語尾を濁すと、アレンはドレスから頭を出して驚いた。
「え? でも、今回の君の旅行記、スポンサーはイザード造船じゃないのかい?」
「そう、今回初めて、ブルームーン商会と関連するところからの依頼で動いてる、もちろん、社の人には口止めしてるけど」
「……なんか、あやういなあ……、いや、もう、本当に今更なんだけど」
「どういう意味?」
「『サンシャイン・ワールド』誌、唯一の女性記者、イザベラ・クリフトンの出自は一応秘密って事になってるけど、君がブルームーン商会社長、ヘンリー・アトキンソンの娘である事を知っている人間は皆無ってわけじゃない、って事、こちらの業界の人で、君がイライザだってわかってる人間に、『イザベラ・クリフトン』と名乗ったら、その時点でわかっちゃうわけだろ?」
「……それは、まあ、そうなんだけど」
「甘いなあ、イライザ、出し抜いたり、情報を隠したりは、競争している会社同士では普通にある事だろうに」
「それってつまり?」
「ガブリエル・イザードは、君こそがブルームーン商会ご令嬢と知った上で依頼をしてきた可能性は皆無じゃないって事」
「じゃあどうして何も言わないの? 知っていたとしたら、茶番に付き合わされてるって事でしょ? 態度に出るんじゃないかなあ」
「さあ? 知っていて裏で笑っているのか、……君同様に、弱みを握った上でコントロールしようとしているか」
「どういう意味よ」
「君が、ガブリエル・イザードのスキャンダルを握った上で、何らかの取引を持ちかけようと思っているように、向こうも似たような事を考えてるんじゃないかって事さ、悪いけど、僕が気づかず、純然たる好意で君に協力してるって思ってた?」
ズバリ、思惑を言われて、イライザは無言になった。
イライザが、一旦取材を終えてキャビンに戻ると、アレンはディナー用のドレスに着替えているところだった。
ベッドの上に手持ちの衣装を並べて、組み合わせを考えているところなどは、すっかり開き直っているように見える。何においても全力で手を抜かないところは、アレンの美点だった。
「ニュートン? って?」
アレンに、どちらが似合うか見立てつつ、イライザが答えた。
「イザード氏の部下だよ、イザード造船の社員、立場は何になるんだろう……、広報、とかになるのかな、宣伝に出てくる事が多いかな、取材なんかも彼が受けていたような気がするけど、会ったことは?」
「こっちの業界に絡む人には接点をもたないようにしてるから……」
イライザが語尾を濁すと、アレンはドレスから頭を出して驚いた。
「え? でも、今回の君の旅行記、スポンサーはイザード造船じゃないのかい?」
「そう、今回初めて、ブルームーン商会と関連するところからの依頼で動いてる、もちろん、社の人には口止めしてるけど」
「……なんか、あやういなあ……、いや、もう、本当に今更なんだけど」
「どういう意味?」
「『サンシャイン・ワールド』誌、唯一の女性記者、イザベラ・クリフトンの出自は一応秘密って事になってるけど、君がブルームーン商会社長、ヘンリー・アトキンソンの娘である事を知っている人間は皆無ってわけじゃない、って事、こちらの業界の人で、君がイライザだってわかってる人間に、『イザベラ・クリフトン』と名乗ったら、その時点でわかっちゃうわけだろ?」
「……それは、まあ、そうなんだけど」
「甘いなあ、イライザ、出し抜いたり、情報を隠したりは、競争している会社同士では普通にある事だろうに」
「それってつまり?」
「ガブリエル・イザードは、君こそがブルームーン商会ご令嬢と知った上で依頼をしてきた可能性は皆無じゃないって事」
「じゃあどうして何も言わないの? 知っていたとしたら、茶番に付き合わされてるって事でしょ? 態度に出るんじゃないかなあ」
「さあ? 知っていて裏で笑っているのか、……君同様に、弱みを握った上でコントロールしようとしているか」
「どういう意味よ」
「君が、ガブリエル・イザードのスキャンダルを握った上で、何らかの取引を持ちかけようと思っているように、向こうも似たような事を考えてるんじゃないかって事さ、悪いけど、僕が気づかず、純然たる好意で君に協力してるって思ってた?」
ズバリ、思惑を言われて、イライザは無言になった。