混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 幸いにして、二人ともまだ着替えをすませてはいなかった為、あわてて身繕いをしてイライザが扉を開けた。

「どうしました?」

 扉を開けると、ガブリエルは一人のようで、手にはディッシュカバーをのせた皿がある。

「いや、二人とも、あまり食事をとれていなかったんじゃないかと、だから差し入れ」

 ガブリエルはイザベラ(イライザ)に皿を渡し、イライザ(の、ふりをしたアレン)の顔を扉越しにちらりと見てから、すぐに立ち去った。

「あ、あの!」

 イライザが引きとめようとすると、ガブリエルは笑顔で答えた。

「こんな遅い時間に、女性の部屋を訪問するのは少し無作法だからね」

「あ、ありがとうございます」

 イライザが礼だけ言うと、ガブリエルは手を振って去って行った。

 ディッシュカバーをとると、中にはサンドイッチがあった。

「うわー、美味しそう、食べていい? ねえ、食べてもいい?」

 空腹だったアレンがさっそく皿を持ってテーブルに置いても、イライザはしばらく扉のところに立っていた。

「イライザ、いらないの? 食べちゃうよ?」

 そう言いながら、すでにアレンは両手にサンドイッチを持っている。

「食べ物をくれる人って、いい人だよね……」

 イライザがつぶやいても、アレンはそれには答えずに、いただきまーす、と、サンドイッチをほおばった。
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