混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「はい、これで楽になったんじゃない?」

 アレンの背中の留具を外して、イライザが言った。
 戒めから解かれたアレンはほぉうと息をついて、ぼんやりと思い出していた事を払うようにかぶりを振った。

「ありがとう、あーーーー、楽、本当に楽。僕は男で良かった、この衣装は、見ている分にはいいけれど、身体的苦痛がともなうね、美を追求する女性の姿勢には頭が下がるよ、本当」

 下着姿になったアレンは伸びをしてベッドにつっぷした。

「私はあまり好きじゃないかな、動きにくいし、創造的な活動を阻害するような気がする」

 イライザは、華美な服装をあまり好まない。イライザ自身が自分の容色についてあまり自信が無いこともあるが、元々の興味が薄いのだ。

「でも、男装はしないんだ」

「別に男になりたいってわけじゃないし、女ものの衣装が嫌いってわけではないから」

「僕は正直女装はコリゴリなんだけど……」

「ごめんなさい……」

「もう、乗ってしまった船だから、文句は言うけど、最初の港までは我慢するよ」

 イライザは、我儘を言いながら、ねぎらいの言葉を忘れないし、感謝の気持ちも、すまない気持ちも示してくれるので、アレンは文句を言いつつ許してしまうのだ。
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