混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 商いの健全さを損なう行為であり、この事が世間の知る所となれば、イザード造船は商いの範を犯したとして、受注を失うだろう。

 まさか、彼が?

 アレンは、短い時間ではあったが、ガブリエル・イザードと共に過ごしている。彼がそんな事をしていると信じたく無かった。

 ララティナ港は、大洋の重要港であると同時に、大規模な海軍基地をも擁する。ガブリエルが単独でララティナ港に来るのは目立つだろうが、新造船のお披露目であれば。

 自分自身への注目を逆手にとって、今、動くのだとしたら、確たる証拠を掴む好機であると言えた。

「……アレン?」

 手紙を手に、あれこれ考えを巡らせているアレンに対して、イライザが声をかける。

「何だか、深刻そうだけど、悪い知らせ?」

 アレンは、この事をイライザに話すべきか少し迷ってこう言った。

「歌う人魚亭のローラが結婚したって」

「……それは、手紙でやりとりするような内容なの?」

「大事件だよ! ああっ、もうあの歌声が聞こえないなんて、港の損失ッ! ブルームーン商会御用達の店をまた開拓しなくちゃ……」

「……先に宿へ行ってもいいかな?」

 イライザは少しあきれたように、一人で商館を出て行こうとした。

「ああっ、待って、僕も行くから!」
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