混戦クルーズ！　造船王は求婚相手を逃さない
　イライザが、店内に足を踏み入れると、店内は賑わっていた。明るいうちから、ビールを片手に談笑している船乗り達。ひと仕事終えた様子の者達が食事をしている店内は混雑していて、イライザは思わず入り口で立ちすくんでしまった。

「はい！　いらっしゃいませ！　相席でよろしいですか？」

　髪に白いものが混ざってはいるが、元気のよい女将が、両手にジョッキを持ちながら、立ち尽くすイライザに声をかけた。

　反射的にイライザが、あ！　はい！　と、答えると、女将はカウンターの片隅を指して、こちらでも？　と、あごをしゃくった。

　イライザがカウンターの空席に腰を下ろすと、隣に三人で腰掛けていた女達が、めずらしそうに声をかけてきた。

「見かけない顔だけど、旅の人？」

　女達は、揃いのエプロンをつけて、早めの夕食なのか、酒は飲まず、定食のような一つの皿に、肉や野菜が盛り合わせになっているものを、それぞれつついているようだった。

「はい、あの、今、停泊中の」

　あまり深く考えずにイライザが言うと、

「停泊中って、もしかして、『青い不死鳥号』の事？　あなた、あの船に乗ってるの？」

　女の一人がイライザの姿を見て、言った。

「客室係？　それとも洗濯？」

　どうやら、客では無く、乗組員だと思われているようだった。

　イライザが答えに困ったようにしていると、

「バカ、ああいう高級な船に務める人らは、気軽に仕事内容を外に言ったりはしないんだよ」

　三人の中では最も年長そうな女が他の二人をたしなめるように言った。

「あ、あのっ！」

　混ぜっ返すようにイライザが頓狂な声をあげた。

　三人の女は驚いた様子でイライザを注目した。

「このお店のお勧めってなんですか？」

　イライザがそう尋ねた後に、空腹を告げる音がきゅうっと鳴った。
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